エッジコンピューティングとは? IoT・5Gとの関係やメリットについて紹介

執筆者
WORKSTYLE SHIFT 編集部

2020.11.19

エッジコンピューティングとは? IoT・5Gとの関係やメリットについて紹介業務効率化

エッジコンピューティングとは、利用端末に近いエリアにサーバーを分散配置させるデータ処理方法です。IoTの発展や5Gの商用サービス化にともない、データ処理の速度や容量の重要性が増してきたことで注目を集めています。

例えばIoT・5Gなどの新しいテクノロジーを導入するには、データの処理や管理方法も整備しなければうまく活用できません。こうしたデータ処理に関する速度・コスト・セキュリティ面の課題を解決できる手段として、エッジコンピューティングは期待されているのです。

今回は、デジタル時代の膨大なデータを有効活用するために、注目が集まるエッジコンピューティングについて解説します。

エッジコンピューティングの仕組み

エッジコンピューティングとは、コンピューターネットワークの縁(=エッジ)でデータ処理を行うネットワーク技法です。膨大なデータ処理が発生する利用端末に近いエリアにサーバー(=エッジサーバー)を配置し、各サーバーで情報処理を行う仕組みで、複数のサーバーにデータを分散させて処理していくことから「分散型」の処理方法とされています。

クラウドコンピューティングとの違い

2000年代に台頭し、現在主流となっているデータ処理方法はクラウドコンピューティングです。クラウドコンピューティングは、ネットワークを通じて1つのサーバーにデータを集め、一括でデータ処理を行う手法です。

クラウドコンピューティングは、さまざまな端末でデータにアクセスでき、データの共有や管理の効率がいいなどのメリットから拡大・普及してきました。しかし、サーバーの負荷が大きいことや、端末とサーバー間の通信距離が遠く、データ処理の速度が遅いというデメリットがあります。

このようなクラウドコンピューティングの弱点を補えるのが、エッジコンピューティングです。どちらか一方ではなく、エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングを相互に補完させる複合システムが、今後主流になっていくと予想されています。

エッジコンピューティングとIoT・5Gの関係

エッジコンピューティングが注目されているのには、IoTの発展と5Gの登場が大きく影響しています。ここでは、なぜIoT・5Gの活用でエッジコンピューティングが必要とされるかを解説します。

IoTとの関係

機械や設備、システムなどあらゆるモノからデータを収集するのがIoTです。複数の機器から常にデータを収集しているため、扱うデータの容量は膨大です。

膨大なデータをクラウドコンピューティングで処理するためには、クラウド側のサーバー性能を強化しなければなりません。また、複数の機器とサーバーでデータを通信するため、通信回線にも負荷がかかり、通信遅延を引き起こす原因にもなります。

こうした課題の中、エッジコンピューティングが登場しました。エッジコンピューティングでは、収集したデータの一次処理をエッジサーバーが行い、精査されたデータをクラウドのサーバーで管理します。サーバーや通信回線で扱うデータの容量を小さくすることで、データ処理や通信の効率化といった課題を解決できるシステムなのです。

5Gとの関係

2020年から本格的に商用サービス化された5Gは、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との接続」といった特徴を持っています。

5Gを最大限活用するためには、データ処理の性能を上げなければなりません。特に高速で遅延のないデータ通信環境には、5Gの活用が不可欠です。しかし、1つのサーバーでデータ処理を行うクラウドコンピューティングでは、サーバーが抱える負荷が大きくなり、しかもサーバーまでの通信距離が遠くなるため、その分速度は遅くなってしまいます。

これ対してエッジコンピューティングでは、複数のエッジサーバーにデータを分散させるため、個々のサーバーの負荷を軽減できます。また、利用端末の近くでデータ処理を行うため、データの通信速度は上がり、通信遅延を防ぐことが可能となります。このように5Gの特徴を最大限に活用するための手法として、エッジコンピューティングには大きな注目が集まっているのです。

エッジコンピューティング導入のメリット

エッジコンピューティングを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットについて見ていきましょう。

①膨大なデータの円滑な処理

製造現場でIoT化が進むと、複数の機器・設備から収集される膨大なデータ処理を常時行うことが必要になります。そのためデータ処理方法を工夫し、サーバーや通信回線を安定化させることが課題になってきます。

エッジコンピューティングでは、複数のサーバーでデータ処理を行います。処理すべきデータが膨大だとしてもデータを分散させるため、1つのサーバーで処理するデータ量は小さくなり、膨大なデータでも円滑に処理することが可能となります。

②リアルタイム性の向上

エッジコンピューティングは、利用端末に近いエリアにサーバーを配置するため、端末とサーバー間の通信距離を短くできます。このためデータ処理・通信速度が上がり、データを扱う上でのリアルタイム性が向上します。

リアルタイムな情報収集により、生産管理や製造ラインの改善・調整に対し迅速な対応が可能になります。その結果、意思決定のスピードを上げ、高速でPDCAを回せるようになることもエッジコンピューティングがもたらすメリットです。

③通信コストの削減

クラウドコンピューティングでは、すべてのデータをクラウドサーバーに送るため、通信するデータ量が膨大になっていました。そのため、データの通信コストや管理コストが大きくなり、通信回線やクラウドサーバーへの投資が必要となるケースもありました。

これに対しエッジコンピューティングでは、エッジサーバーでデータ処理してから、クラウドサーバーに送るため、通信するデータ容量が小さくなります。結果的に通信コストを削減し、通信回線やクラウドサーバーへの投資が少なくなるのです。

④BCPの実現

クラウドコンピューティングの場合、クラウドサーバーが故障などでダウンすると、すべてのデータが扱えなくなるリスクがあります。しかし、エッジサーバーでデータ処理していれば、クラウドサーバーがダウンしてもエッジサーバーのデータを利用できます。

製造業では、災害やトラブルにより製造ラインが稼働できなくなると、大きな損失につながります。リスク管理として、すぐに復旧・稼働できる環境を整備しておくことは非常に重要な対策だと言えるでしょう。

このようにエッジコンピューティングは、BCP(事業継続計画)の役割も担うことができるのです。

BCP(事業継続計画)における企業のデータ保存とバックアップ方法

エッジコンピューティングへの期待

5Gがスタートし、IoT化がさらに進むことでますます期待が高まるエッジコンピューティング。アメリカの調査会社であるマーケッツ&マーケッツ社の2019年8月の調査レポートによると、エッジコンピューティングの世界の市場規模は、2019年に28億万ドル、2024年には90億万ドルに達すると予測しています。その背景には、5G時代の到来と、IoTの普及、リアルタイムアプリケーションの増加により、製造業やIT・通信産業をはじめ、自動車・医療・教育など幅広い分野でエッジコンピューティングが導入される事例が増加することが挙げられます。

参照:マーケッツ&マーケッツ社 「エッジコンピューティングの世界市場予測(~2024年)

エッジコンピューティングの活用例

例えば、アメリカのハードディスクドライブメーカーであるシーゲイトでは、生産ラインで異常を検知した場合、アラートとともに映像が運用担当者へ通知される仕組みを構築しています。撮影される画像は1日で44万枚、データ量は2TBです。この膨大な画像データをエッジサーバーでAI処理することで、リアルタイムなデータ解析が可能になりました。

さらにAIの精度向上に役立つデータのみをエッジサーバーからクラウドサーバーに送信。クラウド上でAIのモデルをアップデートし、エッジサーバーに返すことで解析精度の向上に役立てています。エッジとクラウドのメリットを両立させた好例です。

参照:インプレス「PC Watch」

まとめ

IoTなど新技術を導入する際には、導入するシステムのみに目がいきがちです。しかし、基盤となるデータ処理や通信環境をアップデートしなければ、導入した新技術を最大限に活かすことはできません。

5G・IoTの普及が加速するこれからの時代において、エッジコンピューティングを活用したシステムが主流になることが予測されます。会社の基盤とも言えるデータ処理環境を整備する必要性は、今後さらに増すでしょう。