業務効率化に必要な4つのステップと制度、ITツールを紹介

執筆者
WORKSTYLE SHIFT 編集部

2019.01.23

業務効率化に必要な4つのステップと制度、ITツールを紹介働き方改革

少子高齢化とそれに伴う労働人口の減少は、すべての企業に”変化”を迫っています。もちろん、これまでもコストの削減や利益の最大化を目標として、業務の効率化や簡素化を図ってきたという経営者の声も多く聞きます。

しかし、人手不足が深刻な社会問題となる中、限られた経営資源で高い業績を維持するためには、さらに新しい視点での”業務の効率化”を実践していく必要があります。このような働き方改革の取り組みは、離職防止や優秀な人材の獲得につながるだけではなく、さらには個人、組織の創造性を向上させることによって、新たな成長事業の創出をも可能にします。今回は、業務効率化の目的や進め方、どんなアプローチやツールがあるのかという点をご紹介します。

【小さく始める働き方改革のすすめ】をダウンロードする

企業は例外なく業務効率化が必要

生産年齢人口の推移
<総務省「国勢調査」よりグラフを作成>

少子高齢化の進行によって、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年をピークに減少傾向にあり、総人口も2008年から減少に転じています。総務省「国勢調査」によれば、2015年の総人口は1億2,520万人。生産年齢人口7,592万人のうち、14歳以下の推計人口は1982年から連続して減少が続き、少子化に歯止めがかからない実態が浮き彫りに。将来的に、総人口は2030年に1億1,662万人、2060年には8,674万人にまで減少すると推計されています。生産年齢人口は2030年に6,773万人、2060年には4,418万人と2010年比で約4割も減少するとみられ、危機感を抱かざるを得ません。

限られた経営資源で高い業績を維持していくため、「短時間で多くの成果が上げられるような働き方を」ということで、業務効率化が迫られています。

労働生産性とは?

労働生産性とは、投入した資源(インプット)に対して、産出(アウトプット)がどのくらいあったかを示すもので、数式で表せば、

【労働生産性の算出】
生産性=産出(アウトプット)/ 投入した資源(インプット)

ということになります。

具体的には、アウトプットは商品の生産量や販売額、サービスなどの価値となり、インプットは従業員数や1時間あたりの労働量となります。投入した資源に対して産出の割合が大きいほど生産性は高いということになり、労働者のスキルアップや業務の効率化などによって向上する関係にあります。なお、「付加価値労働生産性」と呼ばれるものもあり、こちらは【付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費】として、労働量で割った関係になります。これらの数字も会社の生産性を表す指標です。

日本の労働生産性は先進国の中でも低いとされています。公益財団法人日本生産性本部の統計によれば、2015年の時間当たりおよび1人当たりの労働生産性は、主要先進7カ国の中で最下位。OECD (経済協力開発機構) 加盟35カ国で見ても、時間当たり20位、1人当たりで22位と低水準です。

今求められている労働生産性向上とは

労働生産性の向上

労働生産性を向上させるためには、短時間で多くの成果をあげられる働き方を構築することが必要です。つまり”つきあい残業”や”時間ばかりかかって何も決まらない会議”など、これまでの日本人の働き方から脱却し、『生産性の高い働き方』への転換が大切です。

かつての「24時間戦えますか?」のコピーに代表されるような長時間労働より、いかに効率よく業務を行えるかが求められています。

働き手のモチベーションを上げるため、ワークライフバランスを整備し、働きがいを創出することも重要です。労働人口を確保するために、リタイア後の高齢者や子育て期の女性たちが活躍できる環境を創出する必要もあるでしょう。人材活用の幅を広げることにより、企業力は磨かれていきます。こうした取り組みをしていかなければ、従業員の離職や定着率の低下を招き、やがて競争力が落ちてしまう結果になるのです。

業務効率化を進めるためのステップ

業務効率化のステップ

業務効率化を進めるにあたって、最初にすべきことは、改善の目的と目標を明確にすることです。そこに関わるすべての人が問題を共有し、共通の認識のもと、次のようなステップで業務効率化を進めていくとよいでしょう。

STEP1 現状把握

まず対象となる業務が現状どのように行われているかを明確にすることです。客観的かつ定量的な数値を出す、従業員にヒアリングを行う、などの方法が一般的です。

STEP2 原因の解析と課題の抽出

課題を抽出していくためには、問題を掘り下げて具体化することが必要です。例えば製造業では「なぜなぜ」という方法を使います。問題に対して「なぜ?」を繰り返し行うことで、問題を追究していく。1つの問題に5回の「なぜ」を繰り返せば、問題の原因まで突き止められるという考え方で、論理的、合理的な解決策が期待できると言われています。

問題をレイヤーで切り分けできない場合、「なぜ」に加えて「何が、いつ、どこで、誰が」という切り口で整理してみるのもいいでしょう。課題を抽出したら、取り組むべき問題に優先順位をつけていきます。「重要度(影響の範囲のランク分け)」、「緊急度(時間的な制約の度合い)」、「拡大の傾向(将来的な影響や問題が拡大することによる損害の度合い)」などを考慮して課題を仕分けします。

STEP3 改善案と目標の設定

抽出した課題についてどのように改善するか、を考えなくてはいけません。その際に、下記の3つを①から③の優先順位で考えると良いでしょう。

①排除、廃止
明らかなムダで、そのプロセスがなくなっても業務全体において支障のないものに対し実施します。

②標準化
業務の流れの中で、共通ルールが確立していないものに対して行います。

③変換、代替
①②でも改善が不可能な業務に対して、業務改善を行います。

課題の内容を整理し、計画的に①②を行います。5W1Hを活用して、最も効果的と思われる改善案から手掛けていくことがポイントとなります。実施するスキームが決まったら、KPI(Key Performance Indicator)を設定します。KPIは「重要業績評価指標」と日本語に訳され、目標の達成に向かってプロセスが適切に実行されているかどうかを計測する役割があります。

最終目標を達成するための、複数のKPIを作り、その進捗状況を知り、あるいは改善案を調整することが有効です。しかもKPIを設定していると、不測の事態に対しても冷静に対処する余裕が生まれ、代替案にシフトするといった機転も利くようになります。

STEP4.「PDCA」を回す

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことによって、継続的に業務を改善していく手法のことです。

1.Plan
業務改善の目標を設定し、解決策を考え、計画を立てます。
2.Do
問題を解決する方法を少しずつ実践していきます。そしてそれが効果的だったか否かを段階的に記録しておきます。
3.Check
試してみた解決策を1.Planの時に予想したものと比較検討し、解決策が効果的なものだったかどうかを評価します。
4.Action
実施した解決策の検討を行い、評価の高かった解決策を実行する、業務改善のためのステップです。

PDCAは文字通りサイクルで、Actionの段階が終了した時に新たなPlanのステップへと戻ります。つまり現状よりもよい解決策、改善に向かって軌道修正しながら継続的に業務の効率化を進めます。

業務効率化におススメの「ECRSの原則」

業務効率化を図る基本的なステップを紹介しましたが、あらゆる業種、業務で応用されている「ECRS(イクルス)の原則」という有名なフレームワークがあるので、紹介します。この原則は、業務効率化のためのフレームワークと呼ばれ、業務プロセスを4つの視点から見直し、最小限のリスクで大きな改善効果が期待できるものです。元々は製造業の生産管理のために開発されたフレームワークですので、上記の4ステップと合わせて、業務改善に取り組むとより効果が期待できます。

【ECRSの4つの視点】
1.Eliminate 排除
2.Combine  結合
3.Rearrange 交換
4.Simplify 簡素化

1.Eliminate 排除
業務全体から不要なものを洗い出し、排除することを最初に行います。日常業務の中で不要な工程がないか、形骸化したミーティングや報告書の作成などを排除し、作業の効率化を進めるフェーズです。

2.Combine 結合
さまざまな業務において、類似する業務があった場合、その作業を同時に行うことができないか、合体させることはできないか?を検討します。「結合」とは逆に、大規模な業務を「分割」できないか、を検討する段階でもあります。

3.Rearrange 交換
一連の業務を効率よく流れるように並べ替えをし、再設計するフェーズです。作業の流れだけでなく、場所や人も対象としてリアレンジします。

4.Simplify 簡素化
最後のフェーズでは、見直した業務実態を再分析して、さらに簡素化ができないかを検討します。業務改善に有効だと考えられるツールやシステムなどの導入も検討範囲に入ります。

業務効率化が期待できる制度

業務効率化への取り組み

業務の効率化を実践し、労働生産性を向上するための取り組みは、すでに始まっています。そのいくつかを紹介しましょう。

テレワーク制度
働き方改革の一環として、トヨタ自動車がいち早く導入して話題になった在宅勤務制度です。日本テレワーク協会によれば「ICTを利用した、場所、時間にとらわれない働き方」と定義されています。企業にとっては交通費の削減や休業からのスムーズな復帰支援、障害者雇用などの点でメリットがあります。

フリーアドレス
フリーアドレスとは、オフィスにおいて、従業員に固定席を与えずに、業務に応じて自由な席で仕事ができる仕組みです。Wi-Fi環境を整備することで、どこでも打ち合わせや情報のやりとりができるなどコミュニケーション活性化が期待でき、固定席を作らないことでコスト削減、セキュリティ改善も行えます。

フレックスタイム制度
月間の総労働時間を規定し、その枠内で始業、終業の時間を自由に設定できる仕組みです。すでに浸透している制度ですが、働き方改革が注目される中で、改めて取り組む企業が増えています。1日のうちで必ず勤務する「コアタイム」を指定する場合もあり、企業の実情に合わせて調整を行っているケースがほとんどです。

サテライトオフィス
企業の本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのことで、従来の支店や支社と異なり、用途や役割などにより「都市型」、「郊外型」、「地方型」に分けられます。「都市型」は都市部の主要拠点に設け、外出の多い営業職などが帰社せずに仕事ができるような役割を持っています。「郊外型」は、通勤時間の短縮や介護、育児などとの両立を目指して設けられるオフィスです。「地方型」は、大都市と変わらないICT環境などを整備することで、自然に囲まれた職住環境でのワークライフバランスを取り入れるもので、国と地方自治体が一体となって推進しているケースもあります。例えば企業誘致に力を入れている徳島県では、2018年4月時点で59社がサテライトオフィスを開設しています。

WEB会議
インターネットを通じて、映像や音声のやりとり、資料の共有などを行い、離れた複数拠点を結んでミーティングなどをセットできるコミュニケーションツールのことです。WEBカメラやヘッドセット、マイクやスピーカーといった簡易的な機器で使用することができ、わずらわしい事前の準備や大掛かりな設定なしに展開できることもメリットです。

健康経営
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、実践することです。経済産業省は、平成26年度から健康経営銘柄の選定を行い、平成28年度には健康経営優良法人認定制度を創設しました。優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備しています。生産性の向上、離職率の低下、企業のイメージアップが期待できる制度です。

効率化ツールの導入
ツールを活用し、いかに効率よく生産性を向上できるかが、社会のニーズです。これに応えるため、ICTツールを活用すると、業務効率化が捗ります。例えば、情報共有系ツールを導入することで社内コミュニケーションの活性化が期待できます。テレワークなどをサポートするリモートツールや、WEB会議システム、クラウドを活用したファイル管理ツールなど、インターネットにさえ接続されていれば、どこからでも情報共有が可能になります。これらは働き方の多様化には欠かせないツールと言えるでしょう。

BI(ビジネス・インテリジェンス)系ツールは、業務にかかわるデータを簡単にグラフやチャートに変換したり、任意の傾向分析をしたりといった目的で使います。例えるならエクセルの使い勝手をさらによくしたものと言ってもいいかもしれません。情報管理系ツールは情報ファイルの管理を行うもので、ファイルのロックや暗号化などを簡単に行えるようにします。ツールやサービスは多種多様ですが、業務効率化の課題にあわせて導入すると、労働生産性の改善が期待できます。

まとめ

業務効率化による労働環境の改善は、生産性を向上できるだけでなく、従業員の負担軽減とワークライフバランスの確保が可能です。将来的に労働人口の減少が予測される現在、優秀な人材の流出は企業の存続に直結するため、業務効率化はそれを防ぐ手立てとしても期待できます。

しかし、業務効率化には多くの作業が必要です。前述した効率化までのステップや「ECRSの原則」を参考にしながら、「今、何をすべきなのか」を理解した上で、業務効率化プロジェクトを丁寧に進行させることが重要になります。また、各工程での作業や解消したい課題に適したツールや制度を採用すると、業務効率化の実現をサポートしてくれるでしょう。