NASとクラウドストレージを徹底比較。法人利用で重視すべきポイント

執筆者
WORKSTYLE SHIFT 編集部

2019.01.16

NASとクラウドストレージを徹底比較。法人利用で重視すべきポイント働き方改革

社内データの共有ストレージやバックアップ機能として、よく比較されるNASとクラウドストレージ。個人利用であれば、導入が簡単なクラウドストレージを選択している方が多いかもしれません。しかし法人利用の際は、導入しやすさだけでなく、運用コストや機能面、緊急時の対応力(BCPの観点)なども重視すべきポイントです。

NASとクラウドストレージは、それぞれ強みが異なります。今回は、NASとクラウドストレージを比較し、社内ニーズに合わせた導入計画を立てる重要性を解説します。

複数のコンピュータをつなぐ「ネットワーク」とネットワークをつなぐ「インターネット」

ネットワークとインターネットの仕組み

NASとクラウドストレージについて解説する前に、両者の特徴をふまえる上で重要な「ネットワーク」と「インターネット」の違いについて、簡単に押さえておきましょう。

ネットワークとは、複数のコンピュータをケーブルや無線などでつなぎ、情報のやり取りを行える仕組みを指します。ネットワークは各家庭や企業、地域ごとにLANを介して構成されているため、同じLANに接続されていない端末とは情報のやり取りができません。

インターネットは、一つひとつ独立しているネットワークをつなげる仕組みです。日常会話で使われる「ネット」は、主にインターネットを指しています。

ネットワークのNASと、インターネットのクラウドストレージ

NASとクラウドストレージの基本的な構造

NASとクラウドストレージは、どちらも複数人でのデータ管理や共有、バックアップを主な目的として利用されます。それぞれの特徴を比較するとき、押さえておくべき構造的な違いは「ネットワークとインターネットのどちらを利用しているか」です。

まずは、NASとクラウドストレージの基本的な構造を解説します。

NASは「ネットワーク」に接続して利用するHDD

NASとは、「Network-Attached Storage(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)」の略です。一般的なHDDはパソコンに接続して使用しますが、NASは有線LANでネットワークに接続して使用するHDDです。NASが接続しているネットワーク内であれば、どの端末からもアクセスできるのが特徴です。

たとえば一般的な外付けHDDであれば、HDDが接続されているパソコンからしかデータにアクセスできないため、業務のできる場所が固定されます。しかしNASを利用すれば、NAS本体から離れた場所からでもノートパソコンやタブレットからデータにアクセスできるようになるため、場所に縛られずに業務ができるのです。

クラウドストレージは「インターネット」を利用するサービス

クラウドストレージとは、事業者が持っているインターネット上のサーバーを借りるサービスです。インターネットを通じてデータをやり取りするため、端末がインターネットに繋がっていれば、どこからでもアクセスできます。

NASは同じネットワーク内でなければ接続できません。しかし、クラウドストレージはインターネットに繋がっているだけでよいため、アクセスできる場所の自由度がNASよりも高いのが特徴です。

NASとクラウドストレージの比較。どちらも性能は一長一短。

ネットワークを利用するNASと、インターネット利用のクラウドストレージ。アクセスの自由度ではクラウドストレージが有利でしたが、ほかに重視すべき点どうでしょうか。

企業が新しいシステムを導入する際、特に意識すべき「コスト」や「機能」、「リスク管理」などのポイントから、NASとクラウドストレージの強みを比較した表が以下になります。

  NAS クラウドストレージ
金銭的コスト
人的コスト
機能
セキュリティリスク
データ消失リスク

上記の表から、どちらも強みと弱みがあることがわかります。次は、それぞれの判定について解説します。

導入・運用コストはクラウドストレージが有利。NASは導入コストが高い

クラウドストレージはインターネット上のサービスですが、NASは実物がある機器です。NASを導入するためには、機器を購入しなければなりません。購入してからもセットアップしなければならず、ネットワークに関する知識を有した人材が必要です。また機器である以上、経年劣化や物理的な衝撃によって故障するリスクがあるため、定期的な部品交換や日常的な取り扱いへの注意喚起といった配慮も必要です。

クラウドストレージはサービス事業者がサーバーを管理しているため、社内の保守運用コストがかかりません。セットアップをサポートしてくれる企業も多く、ノウハウがない企業でも導入が可能です。ストレージ必要量に応じてプランを複数用意しているサービスが一般的なので、企業規模に適した料金を選択できる点も強みです。

  NAS クラウドストレージ
金銭的コスト
人的コスト

機能面はNASが有利。クラウドストレージは一部制限があることも

データのやり取りは頻繁に行うため、ストレージをストレスなく利用できるかどうかも重要なポイントです。

クラウドストレージはインターネットを利用しているため、電波の悪い場所ではダウンロードやアップロードに時間がかかってしまいます。またサービスや契約内容によって、転送速度やファイルの自動圧縮といった制限がかかることもあるため、容量の大きいデータを扱う企業は注意が必要です。

NASは物理的なHDDにデータを保管しているため、クラウドストレージのような制限はありません。データ送受信のスピードに影響するのは社内ネットワークだけなので、快適に利用できます。

  NAS クラウドストレージ
機能

セキュリティでもNASが構造的に安心。クラウドストレージには不正アクセスのリスクも

企業がデータを扱う上でもっとも注意が必要なのがセキュリティや情報漏えいのリスクでしょう。データの中には、機密性の高いファイルも多く含まれるため、契約書や社員の個人情報といった情報の管理には細心の注意が必要です。

情報漏えいリスクを考慮した場合、クラウドストレージよりもNASのほうが比較的安心です。社外のサーバーを利用するクラウドストレージでは、サービス事業者が十分に対策を行っているものの、インターネット通信を介した情報流出や不正アクセスを完全に防ぐことはできません。また、外部に機密情報を保管する体制に不安を覚える企業も少なくないでしょう。

NASはHDDに情報を保管しており、社内ネットワークにだけ接続されています。不正アクセスを受ける可能性もゼロではありませんが、インターネット上のサーバーよりは低リスクだと考えられています。

  NAS クラウドストレージ
セキュリティリスク

データ消失に強いのは一般的にクラウドストレージ。NASは物理的影響によるリスクが高い

データ管理の点で情報漏えいと同じくらい注意したいのが、データの消失です。データ消失は深刻な事故であり、会社の存続に影響を与える可能性もあります。

データ消失のリスクが高いとされているのは、NASです。NASは精密部品で組み上げられた機器のため、本体に強い衝撃が加わったり、停電などで電気供給が急に絶たれたりすると、データが飛んでしまう可能性があります。

しかし、クラウドストレージのデータ消失リスクも低いとは言い切れません。過去には大規模な障害が発生してデータが消失した事例もあります。こうした事例もありますが、通常時のクラウドストレージは、事業者が可能な限りリスク対策を行っているため、NASよりもリスクが低いと言われているのです。

  NAS クラウドストレージ
データ消失リスク

BCP(事業継続計画)設定には、バックアップや管理システムの構築が重要

BCP設置の重要ポイント

NASやクラウドストレージは、データ共有を円滑にするための仕組みですが、情報漏えいやデータ消失などのリスクも抱えています。企業でこうした共有ストレージを利用するときは、有事の際も主要な業務を中断しないように準備したり、万が一業務が止まってもすぐに再開できる仕組みを整えたりすることが重要です。

企業が緊急時の対策や復旧措置を戦略的に整えることは、BCP(Business Continuity Plan)と呼ばれています。BCPは「事業継続計画」と訳され、地震や台風による豪雨をはじめとした災害が多い日本では、すべての企業が意識しておくべき計画です。2011年の東日本大震災以降、多くの企業がBCPを整備するようになりました。

NASやクラウドストレージを利用する際は、バックアップやストレージ管理のシステム構築がBCP設定になります。ほかの拠点にあるNASに不具合が発生しそうなときに、いち早く異常を検知できる管理システムを導入したり、NASとクラウドストレージを併用して日常的なデータ共有とバックアップを使い分けたりするとよいでしょう。

またBCPの観点から、NASを部署ごとに用意して使い分けるなどでさらにリスクを分散することができます。言うまでもないことですが、小まめなバックアップを社内で意識づけることも必須です。

社内ニーズやコストを考慮して導入システムを決定する

国内の少子高齢化は加速しており、労働人口が減少を続けているため、企業にとって人材の確保と生産性向上は大きな課題です。この課題を解消するために、オフィス以外の場所で働く「テレワーク」や、勤務時間を柔軟に調整できる「フレックスタイム勤務」といった、自由な働き方を取り入れる企業が増えています。

政府も『働き方改革』を打ち出し、これまで介護や子育てを機に離職せざるを得なかった人材でも仕事を継続できるように、企業が自由な働き方を導入しやすい仕組みを整えています。全社員が同じ時間、ひとつのオフィスで仕事をする従来の働き方は、徐々に変わりはじめているのです。

社員の働く場所や時間が多様化すると、データ管理が複雑になります。異なる場所からのアクセスがあると、データ共有の利便性やセキュリティへの配慮が必要です。社内ニーズや導入・運用コスト、さまざまなリスクを考慮した上で、NASとクラウドストレージのどちらを導入するか検討してみてください。