バックオフィスの効率化が働き方改革を促進させる

執筆者
WORKSTYLE SHIFT 編集部

2019.02.28

バックオフィスの効率化が働き方改革を促進させる働き方改革

働き方改革が進行するなかで、目を向けなければいけないのがバックオフィスの業務効率化です。

業務効率化による生産性向上では、営業部門や製造部門など利益が発生する部署がフォーカスされがちですが、人事や採用といったバックオフィス分野でもテクノロジーとの融合による業務効率化が急速に進んでいます。

今回は、バックオフィスの業務効率化に焦点をあてて、普及がすすむHRテックなどのサービスを紹介します。

そもそもバックオフィスとは?定義と役割を解説

バックオフィスの定義と役割

バックオフィスとは、人事や経理などの社内業務を指し、顧客と接する「フロントオフィス」(窓口業務)の対となる概念です。営業・接客業務を後ろから支援する「事務作業全般」と捉えるといいでしょう。窓口業務の多い金融機関やコールセンターなどの業界から生まれた言葉として使われています。事務作業の種類は多岐にわたりますが、おおむね「人事」「経理」「法務」「財務」「総務」に大別できます。

バックオフィスが企業で担う役割

バックオフィスの役割

バックオフィスが上手く機能すると、各部署の働きやすい環境をつくることができます。バックオフィスは利益に直結する業務があまりないものの、労働環境は社員の満足度を大きく左右するため、重要な役割を担っていると言えます。

例えば、「営業部」は顧客と接し会社の売上を増やす直接的な部門ですが、そこから生まれた利益の書類管理、営業社員の労務管理、または予算の振り分け、時には紛糾対応などのすべてを営業社員が1人で行うことはできません。彼らが円滑に営業できる裏では、必ず経理、総務、人事などの専門スタッフが活躍しているのです。

裏方であるバックオフィスが機能すればするほど、営業・接客部門の社員は効率的に動けるようになります。反対にバックオフィスが機能しなくなると、営業・接客部門の生産性もそれだけ低下してしまいます。

バックオフィスが機能しない最たる原因は「人材不足」でしょう。例えば、ある中小企業で、経理業務を1人のスタッフが行っていたとします。仮にその年に製造した新製品の売れ行きがよく、発行する請求書の件数が1.5倍に増えた場合、経理スタッフ1人当たりの業務負担も当然増えることになります。

1人当たりの業務負担が増えると、請求書作成に不備が発生したり、または管理シートへの数値入力を間違えたりするなど、ミスをするリスクが高まります。もしミスが発生した場合、サポートする他部署の効率が下がるため、ひとつのミスが会社全体の生産性を落とす原因になるのです。

このようにバックオフィスは、会社の営業活動と密接に繋がっていることがわかります。あらゆる事務作業を効率的に回せるようになれば、社員1人当たりの負担を軽減し、ひいては働きやすさの観点から人材流出を食い止めることができるようになるでしょう。

バックオフィスはHRテックで劇的に変わる

労働力人口減少が確実な日本では1人当たりの生産性向上が急務であるため、業務領域にかかわらず、さまざまなサービスが生まれています。近年、社内の業務効率化を進める上で欠かせない概念に「HRテック」と呼ばれるものがあります。HRテックとはどのようなサービスでしょうか? その定義、市場規模、普及の背景などを説明します。

HRテックとは?

「HRテック」とは、人事領域にかかわる業務をデータとテクノロジーを使って効率化する概念のことです。HRとは、「Human Resource(人的資源)」の略語であり、HRにテクノロジーを掛け合わせた造語を指しています。

HRテックサービスの市場規模は右肩上がりです。情報・通信の調査会社、ミック経済研究所(東京都港区)が2018年2月に公開した「HRTech クラウド市場の実態と展望 2017 年度版」によると、2017年度の市場規模は前年比142.8%増の156.6億円まで飛躍したと発表しました。東京五輪開催後の2022年には2016年度の6倍となる663億円まで市場が拡大すると予測されています。

ミック経済研究所、「HRTech クラウド市場の実態と展望 2017 年度版」を発刊(日本経済新聞)

HR Techが急速に普及する背景

HRテックが急速に普及している背景は、企業が「人材不足」や「就業形態の多様化」といった社会情勢に対応し始めことですが、以下のような要因も影響していると考えられています。

・有効求人倍率の上昇で採用情報を可視化したい
・人材配置の可視化、分析したい
・社員の帰属意識とモチベーションを向上させたい
・バックオフィス業務自動化の認知度の向上

このような企業の思惑と世の中のニーズの変化に加えて、技術の発展・コモディティ化もHRテックの普及を支える要因となっています。こうした要因の中でも、特に影響力の強いものをふたつ解説します。

要因①クラウド型サービス(SaaS)の普及
HRテックの普及を後押ししたのは、「SaaS(Software as a Service)」とも呼ばれる、「クラウド型サービス」の浸透です。インターネット上で公開されているソフトウェアを、必要な機能だけ利用できるサービスを指します。

従来は各企業がソフトウェアのライセンスを購入して、自社サーバで人事データを管理するやり方が主流でしたが、専用システムを企業内に備える都合上、初期投資や保守運用コストが多くかかるというハードルがありました。

一方で、クラウド型サービスは、サービス事業者が自らのサーバで管理しているため、利用企業は保守運用コストがかからないほか、利用できる機能によって料金プランが分けられていることも多く、自社の状況に応じた費用を選べます。クラウド型サービスは、こうした特性を備えているため、これまでコスト面で効率化ツールを利用できなかった企業でも、導入が可能になったのです。

要因②デジタルデバイスの普及と発展
誰もがスマートフォンをはじめとしたデジタルデバイスを持ち歩くようになったことも、前述のクラウド型サービスの台頭を支えています。インターネットに繋がったデバイスを持っていれば、誰でもどこでもサービスを使えるため、HRテックの導入ハードルはグッと下がりました。インターネットを通じてサービスを利用するクラウド型であれば、社員が自分のスマートフォンから操作するといったことができるようになります。

今まで紙やファイルなどアナログで管理していたものが、デジタル化によってクラウド管理ができるようになり、さまざまな恩恵を享受できるようになりました。口頭や書面で伝達する手間が削減され、手元のデバイスでさまざまなデータを確認できるようになったのです。

業務効率化が期待できるおすすめツール

次に、HRテックの具体的なサービス、ツールを紹介します。「採用管理系」「人事・配置・育成・定着」「給与管理・経費計算・労務管理」の3つに大別して説明します。

採用管理系のツール

従業員の採用・定着のための諸業務を効率化するツールはいくつかありますが、ここでは以下のふたつを中心に取り上げます。

・採用プロセスの一元管理
・WEB面接

採用活動ではさまざまな機密情報を取扱います。履歴書や応募者の評価データといった個人情報から、選考状況といった進捗まで多岐にわたります。

採用プロセスをクラウドで一元管理できるサービスでは、応募者の情報管理や進捗確認、人材紹介会社とのやり取りを含めて、大半の業務をクラウド上で行えます。応募者数や面接実施数、評価などの分析結果を可視化できるサービスもあるため、導入する前に利用できる機能の確認が必要です。

また、採用面接をWEB上で録画しながらライブ形式で実施できるサービスもあります。採用面接をWEB上で行えるようになれば、場所にとらわれずに面接を実施できます。こうしたサービスを併用することで、より高い効率化を実現できるでしょう。

人事、配置、育成、定着などのツール

社員の育成・定着など定量化が難しい領域でも、効率化に貢献するHRテックがあります。人事系のサービスを利用すると、主に以下のような指標に影響があるとされています。

・従業員の満足度、モチベーション
・人事評価

従業員の不満を可視化し、モチベーションを向上させる対策を講じるためには、コンディションの現状を把握することが大切です。現状を把握できれば、その上司や人事部門は、適切な対応策を実施しやすくなります。

サービスの中には、定期的にいくつかの質問事項に答えることで、コンディションの現状を計測できるものもあります。従業員の状況を可視化できるサービスを活用する際は、数値化しただけで終わらせず、データをもとに対策を講じることまで一貫して行いましょう。

人事担当者にとって、最も重要な業務のひとつである「人事評価」業務もクラウド型サービスで行えます。

提供されているサービスによって機能や内容はそれぞれ異なりますが、目標管理や360度評価などの制度を使って、評価情報をクラウドで一元管理できるものや、各社員の目標を経営目標や部門目標と照合させながら進捗を管理できるものなどがあります。自社の制度や評価方針にあわせて利用するサービスを選択すると、複雑な人事評価業務の効率を上げることが可能です。

給与管理、経費計算、労務管理

毎月発生する経費精算や給与計算は、経理担当者にとって重要な業務である一方、非常に工数がかかります。領収書の額面と経費管理表に間違いがないか、ボーナスや報奨金などで給与が変わる場合の確認など、振込金額を間違えると課税額が変わってしまう可能性あるため、ミスが許されない業務です。

こうした業務を人手で行う場合、どれだけ注意を払ってもミスを完全に防ぐことはできません。こうした課題を解決するために、勤怠・従業員データから、給与・税金を自動で算出し、給与明細作成・配布をワンクリックでできるサービスもあります。

また、簡単な情報収集や各種書類を自動で作成でき、役所への電子申請や給与明細、雇用契約書もすべてオンライン上で済ませることができるサービスもあるため、自社に最適なサービスかどうか、検討しましょう。

ツールを導入する前に押さえておくべきポイント

ツール導入前のポイント

バックオフィスの効率化にかかわるサービスは多岐にわたりますが、導入を決定する上で押さえておくべきポイントは何でしょうか。

最も重要視すべきポイントは「そのサービスで自社の課題を解決できるかどうか」です。さらに、下記の項目をチェックすることで、サービス導入と成功を実現しやすくなります。

【コスト】
初期費用の安さが取り立てて強調されやすいクラウド型サービスですが、導入後のランニングコストは、サービス事業者によってばらつきがあります。中長期的な運用コストを視野に入れて比較検討することが大切です。

【セキュリティ】
企業経営者やマネジメント層は個人情報の漏えいに最大限注意を払わなくてはいけません。特に労務管理や人事評価、経理といったバックオフィス業務は個人情報を扱います。クラウドに預けた情報を管理する上で、万が一トラブルが起きた時の責任の範囲を確認、またはそれを自社で負担できるレベルのものかどうかまで調べておく必要があります。情報漏えいのリスクや対策については、以下の記事で解説しています。

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企業における情報漏えいの原因と対策、事例を紹介

【サポート体制・移行支援】
長期的運用を見据える上で、システム移行時・移行後の運用面で、どの程度サポートしてくれるかどうかも確認しておきましょう。日常的な運用のサポート体制はあるか、有事の際の保証内容や適用範囲は自社の要件とマッチしているかなど、サービス補償「SLA(Service Level Agreement)」の吟味が必要です。

【拡張性・柔軟性】
情報量や業務範囲が増えた時、システム機能を拡張させた方がよいケースもあります。そのクラウドサービスが、どこまで拡張に応じられるかどうかを調べておきましょう。それぞれ似たようなサービスでも、詳細を追えば違いが見えてきます。

上記の項目は、さまざまなサービスを比較検討する際のポイントです。先程も述べたように、サービスを導入する際に最も重要なのは、「何のためにクラウドを導入するのか」「クラウドで何を実現したいのか」を明確化することです。この最大の目的を実現するための最適なサービスを選択できるように、準備を進めましょう。

「クラウド型サービス」でバックオフィスの働き方改革を実現する

バックオフィス業務には、領域ごとにさまざまなクラウド型サービスがあることを紹介しました。これまで紙やエクセルで管理していた情報を、こうしたクラウド型サービスで一元管理することで、業務を効率化できることがわかります。

業務効率化は1人当たりの作業負担を減らせることから、人手不足・社員の不満の解消に役立ちます。また、導入コストが従来の買い切り方式のソフトウェアよりも安いものが多いため、企業規模を問わずに導入できる「働き方改革」のツールと言えます。

バックオフィスのムダを削減し、業務効率化を実現するためにも、ぜひクラウド型サービスを検討してみてはいかがでしょうか。