店舗の売上アップには売上分析が重要。仕組みや方法を徹底解説します。
2019.04.08
店舗経営を行う上で避けては通れないのが、売上分析です。正確な分析をすることで売れ筋の商品や客層、購買が集中する時間帯なども把握、その上で対策を練ることで成果に導くことができます。
しかし、細かい計算や複雑な視点もあるため、閉店後に作業をすると時間も手間もかかってしまいます。今回は、売上分析の基礎知識をはじめ、課題解決のためのヒントを紹介します。
店舗・小売の売上とは?計算方法を紹介
まずは店舗の売上がどのような仕組みになっているのか、今一度把握しておきましょう。
売上の仕組み
一般的に、売上は以下の計算式で求めることができます。
売上=来店客数×購買率×平均客単価
【来店客数】
来店客数は、店舗にやってきたお客様の人数です。ここで注意しておきたいのは、「来店はしたものの、何も購入せずに帰る」方もいることから、来店者数が必ずしも購買客数と一致するとは限らない点にあります。
【購買率】
来店したお客様のうち、実際に商品を購入した方の割合を示すのが「購買率」です。購買率は以下の計算式で求めます。
購買率=購買客数÷来店客数
【客単価】
客単価は、1回の買い物でお客様が支払う金額の平均です。客単価を出すときは、このような計算式を使います。
客単価=売上総額÷購買客数
売上を伸ばすためには、どれも非常に重要な要素になります。例えば、客単価では、購買客数が月に100人で客単価が500円上がった場合、100人(購買客数)×500円(客単価)で月の売上が50,000円アップすることとなります。
売上と利益を分解する!店舗分析には多角的な視点が不可欠
次に売上をさらに分析していきますが、「売上」と「利益」の違いについてもおさらいをします。「売上」は商品の販売やサービスの提供により、得た代金の総額を指します。しかし、利益はここから商品やサービスを提供するまでにかかった費用(コスト)を引いたものです。どれほど売上が好調であっても、費用(コスト)が大きければ大幅な利益獲得は見込めません。「売上」と「利益」を求めるにあたって、下記の知識があるとより分析も正確に行うことができます。
【値入高】
商品の販売価格を決定することを値入といいます。そして商品の販売価格から、原価(商品やサービスを作るのにかかった費用)を引くと、値入高が求められます。言わば、値入高は商品やサービスを販売した際、期待できる利益です。
【値入率】
値入率は、商品の売価に対する利益の割合を表す指標です。値入率が高ければ高いほど、販売時の利益が多く出ることとなります。
値入率(%) =(想定売価 - 仕入原価)÷ 想定売価 × 100
【利掛率】
利掛率は、原価に対する値入高の割合を指します。
利掛率=値入高÷原価×100
【粗利益高】
粗利益(荒利益)とは、実際の売買利益高のことです。売上と売上原価との差額のため、売上から売上原価を引くことで求められます。また、「粗利」と略されることもあります。
粗利益高=売上-売上原価
【ロス率】
何らかの原因により、商品が提供できないと「ロス」が発生します。飲食店では材料の過剰な仕入れやメニューの作り直し、小売店では万引きや内部スタッフの横領によって発生することが多いようです。
売上に対するロスの割合は、以下の計算式で確認できます。
ロス率(%)=ロス÷売上(実績)×100
似ているようで全く違う!利益の種類
「利益」とひと口に言っても、その種類はさまざまです。ここでは、5種類の利益について、それぞれの違いを解説します。
【売上高総利益】
売上-売上原価
売上高総利益は、売上からコストを差し引いた、大元の利益のこと。例えば、おにぎりであれば白米や具材といった食材、時計であれば基盤といった部品の仕入れ金額を売上から差し引いた金額が、売上高総利益となります。
【営業利益】
売上高総利益-販管費
商品を販売する際にも、さまざまな費用が必要となります。これが販管費で、従業員に支払う人件費や交通費、店舗の賃料や光熱費、広告費をはじめ、取引先との会食にかかる接待交際費もこれに含まれます。売上高総利益から、販管費を除いて残ったものが、営業利益となります。
【総利益】
営業利益+営業外収益
店舗の主な影響活動以外から得られる収益は、営業外収益と呼ばれており、株式や預金によって生じる配当金や利息がこれに当てはまります。この営業外収益と営業利益を合わせると、総利益となります。
【純利益(経常利益)】
総利益-営業外費用
純利益(経常利益)とは、店舗の通常の業務から得られた利益のこと。先ほどの総利益から、営業外費用や支払利息といった費用を引くことで、算出できます。
損益分岐点の計算方法とは
店舗運営では必ず毎月の売上目標と利益目標を設定して、達成することを目指す必要があります。そこで重要視されるのが、「損益分岐点売上高」です。「損益分岐点売上高」とは、利益を得られるボーダーラインであり、売上が上回ると黒字になり、下回れば赤字になります。「損益分岐点売上高」は、以下の計算式で算出されます。
損益分岐点売上高=固定費÷〔1-(変動費÷売上高)〕
固定費とは、売上に左右されずに発生する費用のことです。家賃や機材のリース料、正社員への給与や水道光熱費の基本料金などが固定費にあたります。一方で、変動費は商品や材料の仕入高、パートやアルバイトの給与、販売促進費など毎月変動する費用になります。下記で詳しく解説します。
飲食店で必要な固定費
●F/Lコスト
飲食店経営において重要な費用と言えば、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計となるF/Lコストです。F/Lコストを売上で割ったものをF/L比率と言います。F/L比率の目安は、50%と言われています。F/L比率が50%を上回るようだと利益率が低いことが考えられるので、人件費や食材費の改善をしましょう。
●賃料
一般的に、売上に対して家賃は7〜10%ほどが適していると言われています。店舗物件はエリアや面積、階数によって大きく異なるため、売上をもとに適した物件を探すことが重要です。
●水道光熱費
賃料と同じく、水道光熱費も一般的に売上の5〜10%ほどに保つことで無理なく利益を上げられると言われています。夏や冬など、空調を入れることも多い季節でもこの比率を意識しておきましょう。
飲食店の場合は回転率も重要!
飲食店では座席の回転率も売上に大きく影響しています。この回転率とは、ひとつの椅子やテーブルを、1日に何人のお客様が使ったのかを割り出す考え方です。回転率が高ければ高いほど、売上は高くなります。
回転率=1日の来客数÷客席数
仮に客席が20席あるレストランで、100人のお客様が来店した場合の回転率は5となります。となります。ラーメン店やファーストフード店など、短時間で食事を済ませる店舗では回転率が高く、バーや高級料理店では1人あたりの滞在時間が長いことから回転率が低い傾向にあります。そのため、回転率は客単価と密接に関わっています。シンプルに言うと、客単価が低ければ回転率が高くなるように工夫をしなければいけません。
売上=客単価×(座席×回転率)
店舗を経営する際、闇雲に回転率を上げようとして、販売促進費にコストをかけたとしても、売上アップに直結しないケースもあります。どれほどの売上が期待できるのかを予想し、実際に得た売上はどのような特徴が見られるのかを分析して、対策を練るようにしましょう。
店舗の売上をあげるための方法
売上の構成要素がわかったところで、売上アップの方法を確認しましょう。端的に言えば、来客数と客単価を上げることで、売上アップにつながります。
来客数を上げるための施策
店舗に来店するお客様の人数を増やすには、店舗の認知度を上げることが必須です。飲食店の場合はグルメサイトに掲載するのはもちろん、TwitterやFacebookを中心としたSNSを上手く活用するのも代表例です。また、Instagramも「インスタ映え」を求める若い女性へのアプローチに有効です。色彩豊かな商品やフォトスポットによってメディアからも大きな注目を集める事例があります。
店舗の前を通りかかる人もまた、お客様になりうる可能性を秘めています。しかし、「どのようなお店なのか」、「どういう目玉商品があるのか」といった情報がなければ、来店する動機が見つからないため通り過ぎてしまいます。だからこそ、店舗の商品や魅力をわかりやすく伝えなければいけません。
入店率をあげる際に有効なのが、デジタルサイネージです。立看板と担う役割は同様ですが、デジタルサイネージは映像を流すことができ、配信するコンテンツも定期的に変えることができるため、表現力に富んでいます。そのため従来の立看板より、魅力を強く訴求することができます。
客単価を上げるための施策
店舗の場合、お客様の滞在率が長くなるほど客単価が高くなると言われています。そのため店舗レイアウトは、できるだけお客様に店の隅々まで歩いてもらえるような工夫が必要です。お店を移動した分、多くの商品に触れる機会が生まれるので購買率・客単価が上がることを期待できます。
また陳列棚にも工夫が必要になります。人の目線の位置にあたる「ゴールデンゾーン」は購買率が高くなります。どの陳列棚のどの位置に、どのような商品を置くのか、どのようなジャンルで棚を分けるのかなど分析、改善を繰り返す必要があります。
販売・売上管理の業務を効率化するためには
売上分析をして、経営目標に活かすためには、リアルタイムのデータ収集と多角的な視点が必要になります。しかし、閉店後に細々とした処理業務を行うのは大変な労力となります。毎日、無理なく売上を分析するには販売管理システムやPOSなどのITツールが有効です。
販売管理システムやPOS導入のメリット
企業では、売上管理システムや在庫管理システムを導入している場合が多いですが、店舗では売上管理、在庫管理から売上分析まで一気通貫で行えるPOSシステムの普及が進んでいます。POSとは、販売時点情報管理(Point of Sale)の略称です。通常のレジスター型のPOSシステムのほか、ハンディターミナル型のPOSシステム、タブレットやスマートフォンなどにインストールして利用できるPOSシステムも存在します。POSシステム導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1.手打ちのレジよりも会計処理がスムーズ
商品コードのスキャンにより処理が行われるため、手打ちのレジに比べ会計処理がスムーズです。混雑を解消できるため、お客様へのストレスもなくなります。また会計時のミスの低減にも繋がります。
2.販売情報の可視化
会計を行うだけの一般的なレジとは異なり、POSシステムでは「いつ・どの商品を・どんなお客様に・いくつ販売したのか」といった情報がデータベースに蓄積されていきます。このデータをもとに、売れ筋の商品や客層、時間帯を分析し、マーケティングに活かすことができるのもPOSシステム導入のメリットです。
3.複数店舗の一元管理
売上データの一元管理が可能なため複数店舗の経営をしている場合は、本部が状況をリアルタイムに把握して、在庫管理の最適化を図ることができます。店舗ごとの比較も可能です。
4.業務効率化
売上の締め、日報、分析などさまざまな業務の効率化を期待できます。効率化して生まれた時間を、店舗レイアウトの変更やPOP制作など、他の業務に向けることで、良好なサイクルの店舗運営を可能にします。
まとめ
利益をアップさせ、より良い店舗づくりをするためには売上分析は欠かせません。問題を洗い出してみることで改善点が見つかり、店舗の弱点を補うための施策を打ち出せることでしょう。その際には、店舗の規模や解決したい課題に適したシステムを導入するのもひとつの方法です。まずは正確な売上のデータを分析するところから始めてみてはいかがでしょうか。