インストアマーケティングとは?海外・国内の事例とともに解説!

執筆者
WORKSTYLE SHIFT 編集部

2020.04.30

インストアマーケティングとは?海外・国内の事例とともに解説!売上アップ

顧客満足を追求するマーケティングにおいて、小売店での販売活動や広告活動などを最適化する「インストアマーケティング」に注目が集まっています。消費者ニーズが多様化する中で、企業は実店舗において、商品のブランド力や従来の広告手法以外の施策が求められています。

今回は、デジタル技術の革新により店舗での売上増加が期待される「インストアマーケティング」について、関連する用語を含め事例とともに解説します。

インストアマーケティングとは?

インストアマーケティングとは、店舗を起点としたマーケティング手法で、消費者ニーズをくみ取り、店頭での売上効果・効率性を最大化させる考え方のことを指します。近年デジタルサイネージなどのデジタル技術を用いた店舗での販売促進活動が見られますが、なぜ今、インストアマーケティングに注目が集まっているのでしょうか。アメリカとカナダで行われた、店舗を訪れる消費者心理に関する以下のアンケートデータを見てみましょう。

・消費者は店舗での買い物を好んでいる

<出典:https://issuu.com/sapientnitro/docs/tr3_retailresearch

スマホの普及により、場所を問わないインターネットでの購買は年々拡大していますが、上記のデータからわかるように、いまだ店舗での買い物を好んでいる消費者は多く存在します。

・半数以上の消費者が、店舗に入るまで購入するものを決めていない

<出典:https://issuu.com/sapientnitro/docs/tr3_retailresearch

購入するものを明確に決めずに店舗を訪れる「非計画購買者」が半数以上を占めていることがわかります。では、消費者は店舗に何を期待して訪れているのでしょうか。次のデータを見てみましょう。

・店舗に訪れた際、最も知りたい商品情報は「商品の仕様」

<出典:https://issuu.com/sapientnitro/docs/tr3_retailresearch

上記のデータから、消費者は商品購入前にできるだけ多くの情報を必要としていることがわかります。つまり非計画購買者を含め、消費者が店舗に訪れる理由は、実際に商品を確認して比較検討するためだと考えられます。

以上3つのデータからも、店舗における顧客の購買を促進させるインストアマーケティングが、実店舗での売上向上に効果が期待される背景が見て取れます。場所を問わないネット店舗の拡大背景があるからこそ、実店舗でのみ得られる顧客のニーズを満たす取り組みは、今後さらに注目されるでしょう。

それでは、インストアマーケティングの考えをもとにした取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な役割や種類を解説します。

インストアマーチャンダイジング

インストアマーケティングが売り場の販売効果を促進させる「考え方」なのに対し、インストアマーチャンダイジングは、商品の品揃えや陳列など、より具体的な売上向上のための「取り組み」を言います。来店客、特に商品を購入する予定のなかった非計画購買者に対して、売り場でのさまざまな演出などを通し購買行動を促進させ、客単価を増やし売上を増加させるのが目的です。

さらに、インストアマーチャンダイジングは店頭での広告を指すインストアプロモーション、店舗内の棚割・商品陳列を最適化させるスペースマネジメントの2つに分けることができます。

インストアプロモーション

従来、POPや割引シールなどを用いた、商品の「価格」に重点のおかれた店頭でのプロモーションがなされてきましたが、近年のデジタル技術の進歩によって、デジタルサイネージによる動画などのビジュアル化されたプロモーションが可能となり、商品の特性や品質を訴える「商品説明」にも重点がおかれるようになってきました。どちらか一方が優れているというものではなく、店舗全体でどうしたら顧客の購買心理に働きかけることができるのかを考えましょう。

では、現在インストアプロモーションにはどのような種類があるのか、いくつか紹介します。

インストアプロモーションの種類

・POP
「Point of Purchase」の頭文字をとったものであり、日本語では「購買時点(広告)」と訳されます。POPは店頭や店内、商品の横に掲示されるポスター・バナー広告・天吊りなどさまざまなものがあり、消費者に対して直接的に購買を訴求する効果があります。

・実演販売
店頭や店内で行われる販売促進活動の1つであり、デモンストレーション販売とも呼ばれています。消費者の前で実際に商品を使ってみせることで、特性や効果、品質などを直接訴求することができます。代表的なものとしては、スーパーなどで行われる試食や試飲などのサンプリングが挙げられます。

・プレミアム
商品におまけや景品、特典などを用意することで、消費者にお得感を感じさせ、商品やサービスの購買を促進させるために行います。消費者に関連のある商品のサンプルなどを付けるケースが挙げられ、他の商品情報を知ってもらうための販売行為にもなります。商品購入を迷っている消費者の後押しになるような「価値」のあるおまけが望ましいでしょう。

・デジタルサイネージ(動画)
デジタルサイネージは「電子看板」、「電子掲示板」とも言われ、これまでの紙を用いたPOP広告などでは伝えることのできない臨場感のある情報を、短時間で的確に、音や動画で視覚的に伝えることができます。また、販売促進する場所や時間帯、人の属性などに応じて表示する内容を変えることができます。ポスターや看板のように、張り替えや付け替えをする必要がなく、最適なタイミングで最適なコンテンツを表示できるため、少ない工数で効果的なプロモーションが可能です。

デジタルサイネージの導入事例から学ぶ効果とメリット

スペースマネジメント

インストアマーチャンダイジングは、店舗での販売促進活動を通して、売上高における客単価を上げることを目的としています。小売業における客単価は、次の式で表すことができます。

客単価=動線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価

動線長:顧客が店内で「動く」、「線の」、「長さ」を言います。つまり、より店内を長く歩いてもらう、滞在してもらう動線設計が重要になります。

立寄率:顧客が店内を歩く過程で、個々の売り場へどれだけ立ち寄ってもらえるかを表します。つい立ち止まってしまうような商品陳列や棚割が重要になります。

視認率:立ち寄った売り場において、顧客がどれほど商品を見ているのかを表します。より多くの商品を見てもらうような陳列・ディスプレイ設計が必要です。

買上率:顧客が、見た商品をどれだけの割合で購入するのかを表します。単なる商品の特性や価格だけでなく、周りの購買環境にも左右されます。

買上個数:購入する商品の個数を言います。商品の配列によっては、関連する商品をどれだけ購入してもらえるかにもつながります。

商品単価:購入するにしても、より高額な商品を購入してもらうことが重要です。単価の高い商品への動線作り、ディスプレイなどによる訴求が考えられます。

スペースマネジメントは上記6つの要素を最適化することで、顧客単価を上げ売上と利益の最大化を図るインストアマーチャンダイジングを指します。

さらにスペースマネジメントは、店舗内の動線設計や棚割などの「フロアマネジメント」と、陳列棚における商品配列やディスプレイ設計などの「シェルフマネジメント」の2つに分けることができます。

店舗レイアウトで売上アップ!顧客の行動分析と動線設計を!

インストアマーケティングのメリット

取り組み内容や考え方によって、さまざまな手法に分けられるインストアマーケティングですが、一連の取り組みを行うことで、店舗にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは大きく2つのポイントを紹介します。

顧客の維持・育成

一般的には顧客の獲得を目的とするプロモーションですが、インストアマーケティングにおけるプロモーションや販売促進活動は、顧客ロイヤリティーの強化が可能です。顧客にとって居心地のいい店舗作り、店舗に行かなければ体験できない価値の創出を行うことが、顧客の維持・育成につながり、結果としてその店舗・商品のファンとなることで顧客単価の増加による売上拡大が見込めます。

低予算での売上拡大

新規顧客の獲得を目的とする広告宣伝活動は、莫大な予算がかかることもあります。一方、顧客単価の増加を目的としたインストアマーケティングは、広告宣伝活動に比べ低予算での売上拡大が期待されます。また、デジタルサイネージを用いた動画によるプロモーションが広まれば、これまで人の手によってその都度変えていたポスターや天吊り掲出の手間もなくなるため、人件費の削減や、より売上拡大が見込める販売促進活動へのリソース確保にもつながるでしょう。

インストアマーケティングの事例

国内と海外で実際に行われているインストアマーケティングの事例を紹介します。販売促進のためのプロモーションやスペースマネジメントは、費用やシステム導入を考えると躊躇してしまうかもしれません。しかし事例を参考にし、自社販売促進活動に反映できるようなアイデアのヒントにすることで、競合他社との差別化につなげてください。なぜなら、顧客にとって店舗に訪れるということは、そこでしか得られない「価値」があるからです。

1.独自の情報をデジタルサイネージで発信 「eイヤホン」

イヤホン・ヘッドホン専門店「eイヤホン」は、店頭での情報発信のためにデジタルサイネージを導入しています。情報や表示端末を一元管理できるほか、さまざまな種類のコンテンツを配信することができるため、eコマースでは自社制作のプロモーション動画を配信しています。また、映像の長さを短くしたり、強調したいフレーズにはテロップを付けたりと、お客様からの要望をすぐに改善してすべての端末に反映させることができるのも強みです。

2.仮想試着でアパレル自動販売機の可能性 「URBAN RESEARCH」

セレクトショップ大手のアーバンリサーチは、3D技術を使った試着ができるバーチャルフィッティングサービスを導入しています。デジタルサイネージ端末を通した映像には、リアルタイムに動作する洋服が自分の体に合わせて映し出されるため、まるで実際に着ているかのような体験が可能です。また、同社の通販サイトとも連携しているので、試着した服をその場で通販サイトから購入することができます。店舗における顧客の「脱ぎ着が面倒」という不満を解消するとともに、将来的には「アパレルの自動販売機」としての設置や、従業員を配置しない「無人店舗」としての展開を目指しています。

3.客単価アップ、スマホでクーポン活用 「Target」

アメリカの大手小売店である「Target」は、スマホを用いた販売促進プロモーションを行っています。店内から商品棚のPOPに表示されている内容をテキストメッセージで送ると、すぐにクーポンが返送される仕組みになっており、購入予定のなかった商品を購入させることで、客単価を増加することを目的としています。また、このクーポンは店舗に出向いて初めて得ることができるため、立寄率、視認率の増加につながるでしょう。

まとめ

オンラインショッピングでの消費が増える中、企業にとっては実店舗での売上を保持・拡大させるため、店舗でしか得られない「価値」への取り組みが重要となります。デジタル技術の進歩により、さまざまな角度からの店内プロモーションが期待される今、インストアマーケティングを意識することで、競合他社との差別化を図ってみてはいかがでしょうか。